平成25年度生物科学科ガイダンス挨拶

理学部生物科学科に新しい学生構成員として39名の新入生の皆さんを迎えました。 入学おめでとうございます。 この生物科学科のルーツへと遡ると1909年に設立された広島高等師範学校と、大学としては1929年に設立された広島文理科大学に辿り着きます。 この104年前あるいは84年前を原点として、現在に至り、この生物科学科は日本でも有数の基礎生物学の課程の1つとなっています。

学生の皆さんだけ後ろを振り向いて下さい。皆さんの人数と同じくらい多くの先生がいることがわかりますね。今日欠席している先生も含めて合計42名という多数の教員が生物科学科の教育を担当しています。先生方は今回入学した皆さんがどの様な個性と能力を持っていて、これからの4年間にどのように成長するのか強い関心をもっています。学生数を上回る多数の教員が教育を担当しているということは、広島大学の中でも特別な状況です。皆さんのために特別に沢山のお金が投資されるということです。皆さんが毎年払う授業料はおよそ54万円ですが、その何倍ものお金が投下されます。その分は日本国民の税金で賄われています。 もし、今後の4年間で皆さんが十分に実力をつけて社会で活躍すれば、有効な投資をしたことになりますが、逆に、皆さんがなんとなく過ごしてしまうと、日本にとって損失となると自覚して下さい。教員としても改善しなければなりません。多数の教員が生物科学科にいるという事はまた、これまでに、皆さんと同様に若い学生が教員と共に熱心に学習と研究に取り組み、学問的な成果を出し、卒業生の社会での活躍が評価されたということも示しているわけです。

昨日の学部ガイダンスでの挨拶では、皆さんは理学部という基礎科学の学科の集合体にせっかく加わったのだから、他の学科の人とも日常的に会話して友人になってもらいたいという話をしました。 今日は特に新鮮な気持ちで生物科学科教職員と皆さん学生の両者が集まって居るので、生物学プログラムで学ぶ皆さんへの教員としての期待と予想、学生の側での期待について、先ず話してみます。(学生の人は前を向いて下さい。)

「今から20年先の未来」を想像しましょう。皆さんは38歳から40歳になるので、丁度社会の中堅として活躍しているはずです。その頃にも大学でガイダンスをきっと行っているはずです。しかし、私も含めて今いらっしゃる先生の殆どは居ないはずです。今日は、学生も教職員も、すべて日本人ですが、20年後にも全員が日本人でしょうか? およそ10%、学生定員が同じであれば4〜5人は外国籍になっていると私は想像しています。そのようになる社会背景は別として、様々な国の人が同級生に居ることは日本人の学生にとって意義があると思います。

皆さんは主に中四国地域と九州の高校を卒業して、様々な将来への希望を胸にして入学しました。 皆さんにほぼ共通しているのは、生物に対する強い関心を持っていることと、将来は生物学に関連する職業に就きたいという思いではないでしょうか。生物学を学びたいという思いは今高いレベルにあるはずですが、去年のこの場で、ある先生が爆弾発言をしました。「今君たちの目はキラキラ輝いているが、3年生になる頃には目が死んでいるように変化した人が居るのでとても残念だ」という事です。私はその時に副学科長だったので、その先生の発言に啓発されて、なぜ残念な変化が起こるのか考え、学生の人にも聞いてみました。ある学生は、「1年生と2年生前半に、専門の生物の授業が少ないので気が抜けてしまう」とこぼしました。別の学生は、「教科書が英語だし、分厚くて重いので疲れる」と愚痴を言います。 1つ目の意見については、高校の教育と大学の教育の大きい違いと豊富なメニューが皆さんに正しく伝わっていなかったことが原因で起きた問題です。1年生から2年生の間は専門の生物学の講義が少ないのは確かですが、教養教育のメニューには多数の様々な生物学の講義があります。理学部の先生がカバーしていない分野の基礎生物学もあるし、医学や農学、政治経済に関連する行動心理学も含めて広い意味での生物学の講義を見つけ出すことができます。いずれ、これらと対比して専門である基礎生物学の意義を掴み取れるというメリットもあります。

20年後に、生物学を基本とする職業で皆さんが活躍するのに、いわゆる生物学だけ学習すれば済むでしょうか。生体分子の理解や気候変動の把握解釈に化学や電磁気学が役立ちます。皆さんが今後長い人生を生き抜くうえで、宗教学や哲学など、支えになるかと想像します。大学では、沢山の選択肢の中から自分で選んで学習メニューを作るというのが、基本スタイルだということを是非把握して下さい。

2つ目の意見については、主に使う英語で書かれた教科書は分厚くて重いのも事実です。(しばらく持っていて下さい。)参考書としてよく利用されるこの本も合わせると、確かに重量物です。2冊とも判りやすい良い英文の本なので、日本語で授業を聞いてから、少しずつ読むうちにすらすら読めるようになって、2年生後半から本格化する専門授業で活用できるようになります。こうして3年間過ごして、4年生になる頃には英語で自己表現できるようになってもらいたいと私は期待します。皆さんが苦手だと思うことは、他の人にとっても難関であるから、卒業するころ、あるいは更に大学院に進学して希望の職業に就こうとするときに、競争相手に負けない付加価値が皆さんに付いていると考えて下さい。少なくとも皆さんが活躍できるチャンスは大きく広がっているはずです。重い教科書を使って体力も向上していれば、尚更です。(どうもご苦労様でした。)

この緑色の表紙の本は、天野實先生という皆さんの大先輩が書いた自伝です。 天野先生は広島文理科大学を卒業してから、カナダの大学で大学院を終え、日本の研究所で活躍して、広島大学の総合科学部長を務めて定年退職しました。天野先生が学んだカナダではもちろん授業は英語あるいはフランス語で行われます。ドイツ語も卒業するのに必要だったそうですが、天野先生は高校生と大学生だった時に熱心に外国語の本を読んだので、あまり苦労しなかったとの事です。また、学生のころから様々なチャンスを自ら求めてきたことが記されています。天野先生のような生き方は誰にでもできるというものではありません。途中で挫折するかもしれないと心配になります。私は皆さんに「小さい挑戦」をしてみる事を勧めます。

先程、教養的教育に沢山の選択肢があると言いましたが、授業以外でもこのキャンパスでは、教育資源が豊富にあります。図書館には膨大な数の本があって皆さんを待っています。講演会や勉強会がしばしば開催されているので、学生の皆さんが参加できるものもあるはずです。大学というのは様々な知識、経験、考え方などを持った人たちが集り、活発に意見交換する場所なので、必然的に外国の人も多くいます。食堂や売店で外国からのお客さんや留学生に出くわしたら英語で話かけてみてはどうでしょうか。生きた外国語は身近にあります。これ等総てが大学の資源であり、学習のチャンスでもあると私は考えています。皆さんは4年後に卒業するまでに大学の資源にどれだけ挑戦して吸収できるでしょうか。天野先生のように外国の大学に長く留学することに較べれば、小さい挑戦かもしれませんが、来週も何か挑戦してみようと思うといつも新鮮に過ごせるはずです。

皆さんは今から始まる貴重な大学生活を、皆さんなりの小さな挑戦を加えて、学問を楽しみながら、実力を身に付けてもらいたいと思います。

(生物科学科長)
 

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